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選挙の思い出

選挙の思い出 選挙といっても、政治の話ではなく、僕の子供頃の話。
 当時、比較的真面目な方だった僕は、小学校高学年になってからというもの、代表委員(学級委員の事ね)をやる事が度々あった。と、言っても、好きでやっていた訳じゃなく、クラスメイトに推薦された結果なので、「やらされていた」というのがホントのところ。
 そして、小学5年生の時、クラスの代表?として、とうとう、児童会の副会長候補に推薦されてしまった。
 そもそも人前に立つのが苦手だった僕は、「できません」と、断ったが、「みんなの推薦だから」という理由で、あっさり却下。自分の意思とは関係なく、立候補する事になった。その時疑問に思ったのは「自分がやりたくて出馬?した訳じゃないのに、なんで立候補者って呼ばれるの?」って事。「立候補する人はいますかー」って問いに対して、誰ひとりとして手を挙げる者はおらず、「それでは推薦で決めたいと思います」って流れだったはずなのに、僕は人前で「この度児童会副会長に立候補した・・・・」と言わなくちゃならないのだ。とにかくコレが苦痛だった。だって、はじめから「嘘をつく事」を強要されるのだから、当然である。しかも、当選したくもない選挙に勝つために・・・だ。もうこの時点で訳がわからなかった。
 昼休みを利用して、各クラスをまわり、給食を食べている児童の前で、やる気も無いのに、「僕は○○○を実現させます!よろしくお願いします」と、さもやる気満々のような口調で自分をアピールする事を求められ、たぶん僕はそれっぽい事を喋っていたのだろう。今となっては何も憶えていないけれど・・・。憶えている事と言えば「腹減ったー、僕はいつ給食食べられるんだろ・・・」とぼんやり考えていた事ぐらい。
 どのくらいの選挙活動期間があったのかわからないが、次第に僕の頭の中は、この不毛な活動の最後に待ち受ける立会演説会の事でいっぱいになっていった。
 体育館のステージに立ち、全校生徒の前で行う立ち会い演説会。僕は、それが嫌で嫌でたまらなかった。
 嫌だといっても、その日は確実に近づいてくる訳で、日常の選挙活動に、何を話すか原稿を作り、それを暗唱する作業が加わった。自分がやりたく無い事の為に一生懸命にならざるを得ない空しさ。この選挙の向こうに何があるというのだ。
 僕は、立ち会い演説会当日の朝、体調を崩した。 
 頭痛と吐き気、そして下痢。確か熱も少しあった。親は学校に事情を説明し、僕を休ませた。
 学校を休む事になった僕は、ずっと恐れていた「立ち会い演説会」に出なくてもよくなったという事に安堵するどころか、「出られなかった=責任を果たしていない=こんなのダメだ」という自責の念に精神を支配されたまま、病院に担ぎ込まれた。
 診断の結果、聞かされた病名は「自家中毒」。病院の先生に「最近何か思い悩む事はなかったか」と聞かれ、その時の状況を説明した。原因はやはり選挙だった。
 僕は病院のベッドに横になり、点滴を受けながら「自分が出られなかったら、(立ち会い演説会は)どうなるんだろう」などと、この期に及んで、まだいらぬ心配をしていた。結局立ち会い演説会では、「責任者」と呼ばれる立場のクラスメイトが、僕の代わりに応援演説をしてくれた・・・と後になって聞いた。結果は落選。そのクラスメイトには本当に申し訳無い事をした・・・と今更ながら思ってしまう僕は、実はあまり成長していないのかもしれない。
 何で今更、こんな話を思い出したのだろう。 
(TOYA)
  
TARUPN FREE No82(2011年6月号掲載)コラム:冒頭から暴投

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