平和ボケ?
冬になるとあちらこちらで、「頭上注意」や「落雪注意」の看板を見かける。今年のように大雪の冬は特に。
これは、自分だけかもしれないが、こういった注意を呼びかける看板も、見慣れてくると、見えているのに本来の意味、そこにそう書かれている理由をきちんと認識できない(注意を怠る)状態に陥る事が多々ある。注意する必要があるから表示しているのにもかかわらず。
リアルにそういう(事故や被害という意味での)体験をしないまま、注意表示だけを多く目にすると、きっとそれはどんどん自分の中で「あり得ない事」という位置づけに置換されていくのだろう。
山奥の渓流に釣りに行くと「熊出没注意」という看板を幾度となく目にする。
でも、「そっかー、熊が出るんだったらやめようか?」とはなかなかならない。わざわざこんな山奥まで来たんだから、釣りをしないで帰るのはちょっと・・・と思ってしまうのだ。
心のどこかで「そうは言っても、熊なんてめったに出ないんじゃ?」と思いつつ入渓。結果、無事に釣りを楽しむ事が出来たら、次に同じ状況に出会った時も、また看板を無視して川に入ってしまう。
これを繰り返す事で、僕は「熊出没注意」を目では見えていても、注意どころか熊に対する恐怖すらどんどん忘れていってしまう。
そこには、何かあってからでは遅い・・・とはわかっていても、圧倒的に確率の高い、「何も無い」事を信じて疑わない自分がいる。
でも、もしも、川に入ろうとした時「真新しい熊の足跡を見つけた」と、すれ違った釣り人から聞いたらどうだろう。
僕は、そこで間違いなく引き返すだろう。看板の注意書きだけじゃなく、それを裏付ける情報が入って来た事で、本来認識しつつも眠っていた、熊の存在がリアルなイメージとなって頭の中を占有するからだ。
足跡があった→まだその辺にいるかもしれない→万が一出会ったら・・・となるからね。
では、もしもそれが「真新しい熊の足跡を見つけた」という情報ではなく、「ドラキュラが集団でタムロしてた」という情報だったらどうだろう。たぶん僕は「この釣り人、ア○マおかしいんじゃ?」と一蹴して、川に入るだろう。なぜなら、その情報は決定的にリアリティに欠けている。ドラキュラなんて存在していないと思っているし、しかも集団(笑)「あり得ない=情報が間違っている=熊じゃない=危険は無い」と判断するだろう。
結局、実際に痛い思いをするか、リアルに危険を想像できないかぎり、人はどんどん危機管理が甘くなる。いわゆる平和ボケというやつだ。
そして、いつの日か、運悪く、最悪の状況に巡り会ってしまうのだ。それが限りなくゼロに近い可能性であったとしても、決してゼロではないのだから。
今、これを読んでいるあなた、危険に気付かず、軒下を歩いている自分を想像してみてください。できるだけ、リアルに・・・。
比較的暖かい冬のある日、滑る足下に気を取られて、今にも落ちそうな頭上の屋根の雪にまったく気がついていない・・・次の瞬間・・・・。
はい、これで、しばらくは、落雪事故に遭わないで済みますね・・・。
ということで、この季節、みなさんご注意を!
よーく考えよー♪お金も大事だけど想像力も大事だよー♪(字余り)
(TOYA)
TARUPN FREE No78(2011年2月号掲載)コラム:冒頭から暴投
- カテゴリ:コラム「冒頭から暴投」|2015年06月 04 日 -
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