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ホウィアトアウト

ホワイトアウト ホワイトアウトとは、雪や雲などによって視界が白一色となり、方向・高度が識別不能となる現象の事を言う。
 僕は、何度か冬山登山の経験があるが、幸運にも、そのような状況に陥った事はない。しかし、高校生の頃、下校途中にそれに近い経験をした事がある。
 僕の実家は、隣町の余市。山の中の一軒家で、当時僕は、バスに乗って、小樽の高校に通っていた。
 冬のある日の事、僕は、最終バスで帰宅の途についた。この日は、夕方から天気が荒れ、酷い吹雪。バス停を降りた時の状態は、粋がって薄着をしている高校生には、かなり堪えるレベル。バス停から家までは、通常歩いて15分くらいの道のり。山の中という事もあり、途中から街灯もなくなるのだが、歩き慣れた道なので、普段なら何の苦労も不安も無い道のりだった。だが、この日は様子が全く違っていた。国道から脇道に入ると、暴れ舞う雪が、視界のほとんどを占めていた。
 僕は、吹雪の合間に、時々見え隠れする道路脇の木立を頼りに家に向ったのだが、国道から数十㍍程進んだところで、除雪も止まっており、そこからは、深雪を漕いで進む事を余儀なくされた。
 自分が今、どのあたりを歩いているのかを、時々かすかに見える周りの風景で確かめながら歩くのだが、吹雪は更に酷くなり、ある時点で完全に視界を奪われた。
 先に進もうにも、方向&距離感覚が完全に麻痺してしまっている。万が一、あらぬ方向へ進んでしまった場合、畑や林に迷い込んでしまうかもしれない。僕は、自分の置かれている状況の危うさをこの時初めて認識した。
 前に進めなくなると、立ち止まり、吹雪を避けるために、しゃがみ込んだが、顔を上げる事が出来ない。吹雪の中でただじっとしていると、身体が、手が、どれだけ冷えているのか、まさに「痛い程」わかる。
 「これって、まじヤバいんじゃ?」かじかんだ手を息で温めながら、そう思った。
 その時僕がとった行動は、「吹雪を避けるために穴を掘り、身を潜める事」だった。
 「ビバーク」の知識など無かったが、その時考えられる唯一の選択肢がそれだった。僕がしゃがんだ状態でようやく頭が隠れる程度穴だったが、風の直撃を避ける事ができたので、幾分か、ましな状態になった。そして僕は吹雪がある程度止むまで様子を見て、前に進むタイミングを見計らう事にした。
 「このまま、ココで寝てしまったら・・・」ふと頭を過る。子供の頃、雪山で遭難した人が寝そうになって「寝るなー、寝たら死ぬぞー」というシーンをTVで見たのを思い出した。その時は、決して眠くはなかったが、「突然眠くなるのか?」と思い、僕は、大声で歌を歌った(笑)。
 何曲ぐらい歌っただろう、しばらくして、吹雪が少し弱まったのを見計らい、前に進んだ。家の明かりが見えたのは、バスを降りた1時間後だった。
 家に着くと、雪まみれの兄が先に到着していた。兄曰く、帰って来た道は僕と同じ。途中、車を乗り捨てて、歩いてきたとの事。僕の到着の直前に着いていたので、目の前を歩いていたはずなのに、彼の足跡すら見つける事ができなかった・・・。ひょっとしたら僕が穴の中で歌っている間に、追い抜かれたのかも・・・。
そう思った僕は訊ねてみた。
僕「なんか、その・・・歌、聞こえなかった?」
兄「いや・・・別に・・・なんで?」
僕「なんでもない」
高校生の頃、下校途中にプチ遭難しかけた、笑えない・・・でも、今では笑えるお話でした。 
(TOYA)
  
TARUPN FREE No77(2011年1月号掲載)コラム:冒頭から暴投

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