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CROSS POINT 第4話

ちょっと不思議な体験がきっかけで書く事になった、フリーペーパー TARUPON◆FREEのコラム「冒頭から暴投」の番外編です。
数回に渡り、上段にノンフィクション、下段にそれと同時に進むフィクションの物語を重ねるという妙なスタイルでの連載となります。ご了承ください。

最新話はフリーペーパー TARUPON◆FREE vol.164(2018年4月号)に掲載しています。

Nonfiction

 僕は、トイレに置き忘れた傘を取り戻すべく、トイレに入った「立ち読みの人」が出てくるのを待っていた。 どのくらい経っただろう。10分?いや、15分近くは経っていた。でも「立ち読みの人」は未だ、トイレから出てこない。
 傘を取り戻すだけなら、焦らず待つだけで良いのだがさっき買ったアイスがコンビニ袋の中で、融け始めているはずだ。焦らず・・・なんて悠長な事は言ってられない。
 待ちきれず僕は、トイレの1枚目のドアを開け、中に入った。
 左側の「男性(小)専用個室」の鍵の表示は青。「立ち読みの人」は、どうやらもう一方の「洋式トイレ」の方に入っているようだ。
 「コンコン」僕は、ちょっと控えめにノックをした・・・中からの応答はなかった。少し間をおいて、もう一度ノック・・・やはり応答はない。
 ひょっとして彼は、耳が不自由なの?ノックには応えない主義の人?もう一回ノックしてみる?中で何かあったのかな?まさか、急病で中で倒れてる?ひょっとして一刻を争う状況?ってか、僕のアイスは無事か?ちょっと見るの怖い(笑)。いやいや、笑ってる場合ではない。
 最悪の自体を想定すると、これ以上待つのは得策ではない。ドアの鍵の表示を見たら、なんとこちらも「青」。鍵はかかっていない。水が流れる音も、人が動く気配もない。もう開けて確かめなくては、いくら考えたところではじまらない。ドアを開け、もしも何事もなく中の人を驚かせてしまっても、知った事か!ノックもしたし、中を覗かず開けるだけなら、全力で謝ればなんとかなるはず。僕は、スライド式ドアに手をかけ、ゆっくり動かした。やはり開く。あ、僕の傘だ・・・。 


fiction

 資料として持ち帰る予定だった雑誌の表紙に記載されていた見覚えのある名前、それは私の曽祖父の名前だった。記事によると、曽祖父は、この時代でいうところの今月、9月半ばに、「テロ等準備罪」という罪で逮捕されたらしい。
 しかし、どうもおかしい。私は父から、曽祖父は、多くの国民から支持されていた「良識ある政治家」であり、この国の国益に非常に貢献した人格者だったと聞かされていたのだ。それが、犯罪者だなんて・・・まるで真逆である。
 自分の身内が犯罪者だったという事実を知って、多少なりともショックではあるが、曽祖父は私が生まれた年に亡くなっているし、今更思い悩むほどの事ではない。
 寧ろ、私が気になったのは、自分が聞いていた話との違いについてである。父が私に事実と違った説明をしていたのか、もしくは、どこかで歴史が変わってしまったのか、はたまた、そもそもここは平行世界で、「私たちの世界」とは違った歴史を辿る運命なのか・・・。
 曽祖父の名前を雑誌の表紙に見つけた時の脳裏に電流が走った感覚・・・それは、単に自分の肉親の名前だったからだけではない。
 先日私は50歳になったばかり。曽祖父が亡くなったのが私が生まれた年と同じであるのなら、「私たちの世界」では、まだ、「50年以上前の情報の消去」の実施前の可能性がある。もしも、曽祖父の残した何らかの情報が残っていたら、ひょっとしたら、これがきっかけで、「私たちの世界」と「この時代」との関連性が見えてくるかもしれない。そう考えると、妙な高揚感を覚え、動悸が高まり、なかなかおさまらない。トイレの狭い空間のせいか、息苦しさすら感じる。持病の薬を飲まなくては・・・と思い、ポケットを探るが、ピルケースが無い。こういう症状の時は、なるべく早く薬を飲まなくてはならないのだが、どうしたものか・・・。     

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