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CROSS POINT 第1話

ちょっと不思議な体験がきっかけで書く事になった、フリーペーパー TARUPON◆FREEのコラム「冒頭から暴投」の番外編です。
数回に渡り、上段にノンフィクション、下段にそれと同時に進むフィクションの物語を重ねるという妙なスタイルでの連載となります。ご了承ください。

Nonfiction

 ひどい雨が上がった午前1時少し前。僕は取材を終え、稲穂町にある事務所へ戻る途中だった。午後5半から11時の間に3食分の料理の写真を撮り、試食し、現場で記事を書いた。
 最後にラーメンを食べたせいか、さっぱりしたものが飲みたくなり、バーでカクテルを2杯ほど飲んだが、まだ少し物足りない。「酔い」という意味ではなく、デザート的な何かを欲していた。
 この時間に甘い物?体脂肪を気にしている身としては、本来摂取すべきではないのは、十分承知の上だが、僕はアイスを買うべくコンビニに向かった。仕事とはいえ、夕方から3食分の飯を食べた事を考えると、今更アイスのひとつやふたつを気にしたって既に手遅れだしね。
 そんな事を考えなら事務所に戻る途中のコンビニに立ち寄った。
 扉を開けて中に入ると深夜のアルバイト店員が二人でコーヒーマシーンの調整をしていた。客は、僕の他には、個性的なファッションセンスを持った男性が一人立ち読みをしているだけだった。よくある深夜のコンビニの風景だ。
 僕は、アイスを買う前に、トイレに入った。ここのトイレは、1枚目の扉を入ると、中で男性専用のトイレ(小専用)と、男女用(洋式)の個室に分かれている。僕は後者の個室に入ってから、傘立てに傘を置かずに持ってきてしまった事に気がついた。仕方がないので、傘を手洗い用の流しに引っ掛け、便座に腰掛けた。
 トイレで用を足す際に、色々と考え事をするのは、いつもの事。時計を見るともうすぐ深夜1時になる。「昼間からあちこち動き続けてこの時間か・・・今日はアイスを食べたら寝てしまおう」と、ぼんやり考えていた。

fiction

 「この時代」に降り立ったのは、何度目だろう・・・。いや、この世界・・・と言うべきか。
 タイムリープという現象が、ちょっとした偶然によって、私の勤めている会社「S&I」で発見されてから3ヶ月が経つが、私自身、まだこの行為自体が実際に現在・過去・未来を本当に行き来しているのか疑問を持っている。
 というのも「この時代」と「私たちの時代」は、年号だけで言えば100年ほどの差はあるものの、それほど、社会が大きく変わった様子がないからだ。
 この小樽という街も、「私たちの時代」と大きな違いは無い。歴史的建造物と称される建物も残っているし、道路や公園の配置も100年前とされている「この時代」とほぼ変わっていない。100年という月日を経れば、もっと世の中は変わっていてもおかしく無い。根拠はないが、未来というのもはそういうものなんじゃないかって思っている。なので、ひょっとしたら「この時代」は、「過去」なのではなく、いわゆる「並行世界」と呼ばれるものなのかもしれない。これが、私と、S&I社の現時点での見解だ。
 タイムリープと言いつつも、辿り着けるのは「この時代」の「この場所」に限定されるし、来る度に「この時代」の時間も「私たちの時代」同様に経過している。「この時代」のコンビニの雑誌を読んでいると、それが良くわかる。つまり、タイムリープと呼ぶには、不自由な要素が多すぎるのだ。言い換えれば「年号」くらいしか、その根拠がないという事になる。
 私たちのタイムリープは、開発というよりは、偶然発見されたもので、研究を積み重ねて確立されたものではないのだから、ある意味仕方の無い事だ。仕組みや理屈の解明と、「この時代」が過去なのか、並行世界なのか、もしくは、全く別の何かなのか・・・を解明する事が、現時点での私の仕事となっている。   (次号に続く)

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